糖尿病網膜症

糖尿病網膜症とは

糖尿病網膜症とは、「腎症」「神経症」と並ぶ、糖尿病の三大合併症のひとつです。
成人の失明原因の1つに「糖尿病網膜症」が挙げられ、非常にやっかいな病気です。

糖尿病になって数年から10年以上経過して発症することが多く、長期になるにつれて、網膜をはじめとする眼組織に多くの障害を与えます。かなり進行するまで自覚症状がない場合もあるため、勝手な自己判断は禁物です。

「糖尿病」と診断されたら、特に症状がない場合でも定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けるようにしましょう。

糖尿病網膜症の種類と治療法

糖尿病網膜症は、「単純」「増殖前」「増殖」の3つの時期に分けられます。それぞれの時期で治療法が異なります。

単純糖尿病網膜症

症状
糖尿病網膜症の初期段階です。小さな網膜出血や、毛細血管瘤(血管にコブができる)が見られるようになります。自覚症状はほとんどありません。

治療法
血糖値をコントロールすることで、これらの症状が改善することがあります。具体的な治療は必要ありませんが、3ヶ月に1回程度の経過観察が必要です。

 

増殖前糖尿病網膜症

症状
血管の障害が繰り返されることで血管壁が厚くなり、血管が狭くなったり、つまったりして(血管閉塞)、血液が網膜に十分に流れなくなる(虚血)状態です。
「目がかすむ」「視力低下が下がる」等の症状を感じることもありますが、まったく自覚症状がない場合もあります。

治療法
放置すると、症状がさらに悪化してしまいます。網膜へのレーザー治療を行う必要があります。

 

増殖糖尿病網膜症

症状

糖尿病網膜症がさらに悪化した段階です。
虚血になると、網膜では新しい血管がつくられます(新生血管)。その新生血管が破れて出血を引き起こし、視野に黒いゴミのようなものが見える飛蚊症になったり、急激な視力低下を引き起こしたりします。
また、「増殖組織」といわれる膜ができ、網膜がはがれ「網膜剥離」を引き起こすことがあります。この時期になると、血糖値の状態に関わらず「進行を止めることは難しい」といえます。
特に、若い人ほど進行が早いので、注意が必要です。

 

治療法
レーザー治療に加え、出血や増殖組織を取り除いたり、剥離した網膜をもとに戻したりする「硝子体手術」という手術を行うこともあります。ただし、手術がうまくいったとしても、日常生活を送るのに十分な視力まで回復しないこともあります。

 

糖尿病黄斑浮腫

症状
糖尿病黄斑浮腫は網膜の細い血管にゴミができたり、血管から血液中の成分が漏れ出しそれが網膜内にたまっている状態です。
糖尿病網膜症のどの段階でも現れる症状です。黄斑部はものを見るために最も重要な部分です。
むくみが出てくると、急激な視力低下をきたします。

治療法
抗VEGF薬硝子体内注射やレーザー治療を行います。

網膜静脈閉塞症

症状
網膜静脈閉塞症は、網膜の血管が目詰まりを起こし(閉塞)、網膜出血や網膜浮腫を起こします。
糖尿病、高血圧、慢性腎臓病の方で発症するリスクが高いことが知られています。網膜静脈閉塞症も黄斑部分に浮腫をきたします。静脈の閉塞を発端にむくみ(浮腫)や出血が起きることで、急激に視力が低下したり、視野の一部が欠けたり、もやがかかったように見える症状が現れます。

治療法
静脈の閉塞がひどい場合、その閉塞部位にレーザー治療を行います。黄斑浮腫がある場合は、抗VEGF薬硝子体内注射を行います。

 

痛みの少ないレーザー治療

当院で行う糖尿病網膜症のレーザー治療では、痛みの少ない最新式レーザー「パスカル(PAttern SCAn Laser)」を使用しています。

患者さんの中には、「レーザーは痛い」というイメージをお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、「パスカル」は通常の照射時間の10分の1なので、患者さんの痛みの軽減につながっています。また、一度にたくさんのレーザーを打つことができるので、治療時間や治療回数を短縮することができます。

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